特定認定看護師の誕生へ、日本看護協会より新しい認定看護師制度の素案発表

以前より言われていた認定看護師と特定行為に係る看護師の研修制度を受講した看護師(以下特定看護師)の統合について、2018年11月26日に「新たな認定看護師制度」の制度設計という名目で発表を行いました。この新たな認定看護師制度において

 

”特定認定看護師”が生まれることになります。名称も名乗ってOKと看護協会より大義名分がつかわされました。

 

男性看護師は専門職を目指す人が多いので、今回の制度変更の動向に注目していた人も多いのでは無いでしょうか。

 

そもそもここに至るまでの流れがよくわからないって人のために、これまでの流れと新しい認定看護師制度について私なりの解釈で簡単にまとめてみようと思います。

認定看護師とは

認定看護師制度は、特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護現場における看護ケアの広がりと質の向上をはかることを目的としています。

 

1995年に救急看護と皮膚・排泄ケアの2分野から始まり現在に至るまで21分野にまで増えてきました。2017年時点でその総数は1万8千人を超えました。

認定看護分野一覧と人数

 

特定看護師とは

チーム医療を推進し、看護師がその役割をさらに発揮するため、2014年6月に「特定行為に係る看護師の研修制度」が創設されました。2015年3月には、制度の詳細が定められた省令および施行通知が発出され、10月より研修制度が開始されました。

この研修を受けることでこれまで医師しか出来なかった医療行為を医師の指示の下、手順書に沿ってで看護師が実施することが出来るようになったのです。

この研修を受けた看護師は正式な名称ではありませんが一般的に特定看護師と呼ぶようになりました。法律上で定められている資格ではありません。

特定行為に係る看護師の研修制度によって行えるようになった医療行為一覧(21区分38行為)

特定行為区分の名称

特定行為

呼吸器(気道確保に係るもの)関連 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 侵襲的陽圧換気の設定の変更
非侵襲的陽圧換気の設定の変更
人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整
人工呼吸器からの離脱
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 気管カニューレの交換
循環器関連 一時的ペースメーカの操作及び管理
一時的ペースメーカリードの抜去
経皮的心肺補助装置の操作及び管理
大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整
のう ドレーン管理関連 のう ドレーンの抜去
胸腔ドレーン管理関連 低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更
胸腔ドレーンの抜去
腹腔ドレーン管理関連 腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された 穿せん 刺針の抜針を含む。)
ろう孔管理関連 胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
膀胱ろうカテーテルの交換
栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連 中心静脈カテーテルの抜去
栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連 末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入
創傷管理関連 じょく そう 又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
創傷に対する陰圧閉鎖療法
創部ドレーン管理関連 創部ドレーンの抜去
動脈血液ガス分析関連 直接動脈 穿せん 刺法による採血
とう 骨動脈ラインの確保
透析管理関連 急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析 過器の操作及び管理
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
脱水症状に対する輸液による補正
感染に係る薬剤投与関連 感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与
血糖コントロールに係る薬剤投与関連 インスリンの投与量の調整
術後 とう 痛管理関連 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整
循環動態に係る薬剤投与関連 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整
持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整
持続点滴中の利尿剤の投与量の調整
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 抗けいれん剤の臨時の投与
抗精神病薬の臨時の投与
抗不安薬の臨時の投与
皮膚損傷に係る薬剤投与関連 抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整

 

これらは各区分毎に研修が用意されており、1つの区分を修了すればそこに関連する特定行為が医師の指示のもとで行えるようになるわけです。

現在の特定看護師の数

 

上の図の延べ人数は一度に複数分野の特定行為研修を受ける人がいるので延べ人数としては9757名となっていますが特定看護師の総数は1006名です。

 

目標には遠く及んでいない特定看護師数

厚生労働省はこの特定看護師の数を2025年までに10万人を目指すと言ってこの制度を立ち上げましたが精度が始まって約4年で1000人なので全く届いていません。理由は以前書いた記事にも乗せましたが。

・研修の受講に数十万円かかる。

・特定看護師になっても報酬が増える訳じゃない。

・責任の所在が不明瞭。

 

と言ったことが挙げられます。

 

特定認定看護師を作った理由

増え続ける認定看護師となかなか増えない特定看護師

先にも述べましたが特定看護師はなかなか増えない現状の中、認定看護師は年々増え続けています。

この理由は明らかです。

認定看護師は診療報酬の加算が取れるからです。

全ての領域では無いですが、認定看護師は各専門分野で管理者として配属させたり、また専属チームを作ることで国からの診療報酬を得ることができます。

つまりは病院側に利益をもたらすことが出来るため、病院側から認定を取るための補助が出たり休みなども優遇してくれるなどの支援があるため、看護師も認定を取りやすい環境にあるのです。

http://nintei.nurse.or.jp/nursing/wp-content/uploads/2016/05/haichiyoken_2016.pdf

それに対し特定看護師は特定行為をすることによる診療報酬の加算はありません。もちろん医療行為に対しての診療報酬は出ますが、それはあくまで医師がしていたものを代替するだけであって+αの加算が得られる訳では無いのです。

そのため多くの病院や施設では特定看護師なってもらうこと支援的な姿勢を取れないのが現状なのです。

だってお金にもならないのに半年近くも看護師を休ませないといけない訳ですから現実問題ネームバリューをあげるためにお金を使うことが出来る大きな病院でしか十分な支援をすることが出来ないのです。

そうなると病院からの支援がない看護師が特定看護師になろうとすると、仕事を辞めて、大金を自腹で払って、またあの辛い勉強を実習をしないといけなくなるわけですからそりゃあ増えるわけないですよね。

さらには医師が支持した医療行為によって看護師がミスをした際などの責任の所在もイマイチはっきりしてないってのも大きな原因の一つです。

 

特定看護師を増やしたい日本看護協会

特定看護師を増やすことは国の方針であり、その実行部隊は委託された日本看護協会です。

 

現状を打破し目標の特定看護師10万人を達成するためにはどうすればいいか考えた結果が

 

認定看護師と特定看護師一緒にしちゃえばよくない?

 

という結論です。

 

診療報酬が取れる認定看護師のカリキュラム内に特定行為研修を組み込んでしまえば結果として認定看護師の増加と共に特定看護師も増えるって寸法です。

 

そして1年ほど前から一旦現行の認定看護師の養成カリキュラムは廃止の方向に持っていきます、と言って今まで計画を練ってきた訳です。

そして今回新しい認定看護師、つまりは特定認定看護師の制度の大枠が決まったので発表となったわけです。

 

特定認定看護師の教育過程について今回決まった事

現行の認定看護師制度について

・教育課程については2026年で終了

・認定審査については2029年で終了

・更新や再認定については永続的に継続

現行の規定では認定看護師は5年に1度更新の審査を受ける必要があるので、現行の認定看護師資格を更新、または失効してしまったけど再認定を受けるのは今後も問題なく行えるということです。

新しい認定看護師制度について

・教育課程については2020年より開始

・認定審査は2021年より開始

・再認定は無し。

再認定についてはまだ詳しく決まっていないようですが現行の発表においては無しとされています。

現行の認定看護師が特定認定看護師になるには

現行の認定看護師は特定行為に係る看護師の研修を受け、その後申請を行えば特定認定看護師となることができます。また既にどちらも持っている看護師についても同様です。この申請は2021年より開始されます。

新しい特定認定看護師の看護分類一覧

特定認定看護師の看護分類は一部まとめられたり名称を変更され、これまでの21分野から19分野に縮小されます。

現行の認定分野名

変更内容

認定分野名 英語名

緩和ケア

Palliative Care

分野を統合する

緩和ケア

Palliative Care

がん性疼痛看護

Cancer Pain Management Nursing

がん化学療法看護

Cancer Chemotherapy Nursing

名称を変更する

がん薬物療法看護

Cancer Chemotherapy and Immunotherapy Nursing

がん放射線療法看護

Radiation Therapy Nursing

変更しない

がん放射線療法看護

Radiation Oncology Nursing

乳がん看護

Breast Cancer Nursing

変更しない

乳がん看護

Breast Cancer Nursing

新生児集中ケア

Neonatal Intensive Care

変更しない

新生児集中ケア

Neonatal Intensive Care

小児救急看護

Pediatric Emergency Nursing

名称を変更する

小児プライマリケア

Pediatric Primary Care

救急看護

Emergency Nursing

分野を統合する

クリティカルケア

Critical Care

集中ケア

Intensive Care

手術看護

Perioperative Nursing

変更しない

手術看護

Perioperative Nursing

不妊症看護

Infertility Nursing

名称を変更する

生殖看護

Reproductive Health Care

訪問看護

Visiting Nursing

名称を変更する

在宅ケア

Home Care

慢性呼吸器疾患看護

Chronic Respiratory Nursing

名称を変更する

呼吸器疾患看護

Respiratory Nursing

慢性心不全看護

Chronic Heart Failure Nursing

名称を変更する

心不全看護

Heart Failure Nursing

脳卒中リハビリテーション看護

Stroke Rehabilitation Nursing

名称を変更する

脳卒中看護

Stroke Nursing

透析看護

Dialysis Nursing

名称を変更する

腎不全看護

Nephrology Nursing

認知症看護

Dementia Nursing

変更しない

認知症看護

Dementia Nursing

摂食・嚥下障害看護

Dysphagia Nursing

名称を変更する

摂食嚥下障害看護

Dysphagia Nursing

糖尿病看護

Diabetes Nursing

変更しない

糖尿病看護

Diabetes Nursing

皮膚・排泄ケア

Wound, Ostomy and Continence Nursing

変更しない

皮膚・排泄ケア

Wound, Ostomy and Continence Nursing

感染管理

Infection Control

変更しない

感染管理

Infection Control

 

実質認定看護師はしばらく31分野になる

特定認定看護師の新分野は19分野ですが、統合されてしまう認定看護分野や名称変更前の認定看護分野もそのまま継続することが出来るので、実質31分野になります。

認定看護分野名

備考

日本語名

英語名

がん薬物療法看護

Cancer Chemotherapy and Immunotherapy Nursing

2020年度以降、特定行為研修を組 み込んだ新たな認定看護師教育を 開始する分野

生殖看護

Reproductive Health Care

在宅ケア

Home Care

呼吸器疾患看護

Respiratory Nursing

心不全看護

Heart Failure Nursing

脳卒中看護

Stroke Nursing

腎不全看護

Nephrology Nursing

摂食嚥下障害看護

Dysphagia Nursing

小児プライマリケア

Pediatric Primary Care

クリティカルケア

Critical Care

緩和ケア

Palliative Care

現行の認定看護師教育を2026年 まで実施し、かつ、2020年度以降、 特定行為研修を組み込んだ新たな 認定看護師教育を開始する分野

認知症看護

Dementia Nursing

手術看護

Perioperative Nursing

糖尿病看護

Diabetes Nursing

皮膚・排泄ケア

Wound, Ostomy and Continence Nursing

感染管理

Infection Control

がん放射線療法看護

Radiation Oncology Nursing

乳がん看護

Breast Cancer Nursing

新生児集中ケア

Neonatal Intensive Care

がん性疼痛看護

Cancer Pain Management Nursing

現行の認定看護師教育を2026年 まで実施する分野 ただし、当該分野の個人の資格に ついては永続的に更新が可能

救急看護

Emergency Nursing

集中ケア

Intensive Care

がん化学療法看護

Cancer Chemotherapy Nursing

不妊症看護

Infertility Nursing

訪問看護

Visiting Nursing

慢性呼吸器疾患看護

Chronic Respiratory Nursing

慢性心不全看護

Chronic Heart Failure Nursing

脳卒中リハビリテーション看護

Stroke Rehabilitation Nursing

透析看護

Dialysis Nursing

摂食・嚥下障害看護

Dysphagia Nursing

小児救急看護

Pediatric Emergency Nursing

例えば統合される集中ケア認定看護師は勝手にクリティカルケア認定看護師になるわけでは無いですし、名称変更前の脳卒中リハビリテーション看護師も脳卒中認定看護師にはなりません。それぞれ特定認定看護師の教育課程と内容が異なるからです。

 

そのため現行の認定看護師も含め全部で31分野と大幅に分野が増えるわけでここはかなりややこしいところです。

 

特定行為研修を踏んだ新しい制度において誕生した認定看護師と現行の特定行為の出来ない認定看護師が出てくるので、皮膚・排泄ケアのように前後で同じ名称の認定看護師は

皮膚・排泄ケア認定看護師

皮膚・排泄ケア特定認定看護師

と言った区別をしないと分からないですね。

 

新しい認定看護制度において包括される特定行為

以下の14分野において包括される特定行為の素案が出されています。

クリティカルケア

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

・「呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連」

緩和ケア

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

がん薬物療法看護

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

がん放射線療法看護

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

乳がん看護

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

認知症看護

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

糖尿病看護

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

・「血糖コントロールに係る薬剤投与関連」

感染管理

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

・「感染に係る薬剤投与関連」

皮膚・排泄ケア

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

・「創傷管理関連」

摂食嚥下障害看護

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

心不全看護

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

・「循環動態に係る薬剤投与関連」

脳卒中看護

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

小児プライマリケア

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

新生児集中ケア

・「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」

 

在宅ケア、腎不全看護、呼吸器疾患看護、手術看護、生殖看護の5分野については、2019年度中に基準カリキュラム(案)を作成し、あらためてご意見を募集して決められる予定のようです。

 

これを見ると特定行為全体を包含するというわけではなく、あくまでおまけ程度に必要最低限の特定行為研修をつけて特定認定看護師を増やそうって感じがしてしまうのは俺だけでしょうか。

まとめ

まとめると今回の新しい認定看護師制度については、看護師の専門性をより高めていこうというよりは、厚生労働省の委託を受けた日本看護協会が、何とか特定看護師を増やそうと無理やり制度を変えようとしている感が否めません。

 

俺の病院の認定看護師さんも、特定看護師になるメリットが無いと言っていました。

先にも述べたように特定看護師になり特定行為ができるようになったところで病院が多くのお金をもらえるわけでは無いため、給料の大幅アップということもありません。

 

辛い研修を受け、お金もかかり、責任も重くなり、それでいてご褒美ももらえないとあれば特定行為研修を受ける看護師は限られます。

どちらかというと今回の制度変更は、認定看護師の資格あげるから特定行為研修を受けてと言った感じでしょうか。

 

多分ですが、一番腹が立っているのは、認定看護師では無いけど自らのキャリアアップのために特定行為研修を自腹で受けた看護師さんでは無いでしょうか。

逆に直近で認定看護師を取った人やいま現在認定看護師を取るために学校へ行っている人からすれば特定認定看護師になれたのにタイミングが悪かったと思わないでしょうか。

 

良くも悪くも変化を促すとどこかで波が立つのが一般論です。

今後もまだまだ詰めていかなければならない部分は多いと思いますので、今後の動向に注目ですね。

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